- 用途に応じたケーブル種類の選定方法
- ケーブルサイズの選定方法
- 許容電流の計算
- 電線による電圧降下
ケーブルを選定するには大きく次の2つを決める必要があります。
- ケーブルの種類…使用環境や電力の供給先に応じて適した種類のケーブルを選定します。
- ケーブルのサイズ…ケーブルに流れる電流の大きさに応じてケーブルサイズを選定します。
それぞれどのように決めていけばよいかを確認していきましょう。
ケーブルの種類
主なケーブルの使用用途にあ以下のものがあります。
電力用(幹線、電動機等) | 制御用 | 屋内配線用 | 防災用 |
移動用(クレーン等) | 接地線用 | 盤内配線用 |
電力用(幹線、電動機等)
幹線や電動機への電力供給など大きな電流が流れる場所に主に使用します。
CVケーブル

CVケーブルとは、架橋ポリエチレン(XLPE)を絶縁体とし、ビニル(PVC)で外装を施した電力ケーブルです。正式名称は「架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(600V CVケーブル)」です。低圧~高圧、特別高圧まで幅広い範囲で使用されています。
特徴:
- 耐熱性・耐候性が高い
架橋ポリエチレンは熱に強く、90℃までの連続使用が可能。屋内外問わず使用できます。 - 電気特性が安定
絶縁抵抗が高く、長期使用においても電気性能が安定しています。 - 柔軟で施工性に優れる
軽量かつ曲げやすいため、配線作業がしやすいのも特徴です。
主な用途:
- 屋内配線の幹線
- 屋外配線
- 地中埋設(管路内)
- 太陽光発電設備や分電盤への引き込み線 など
E-EケーブルとE-Tケーブルの違い

共通点:ケーブルの基本構造や材料(XLPE絶縁など)は同じです。
違い:
項目 | E-Eケーブル | E-Tケーブル |
---|---|---|
外部半導電層の構造 | 押出し成形された半導電層 | 巻き付け方式による半導電テープ |
特徴 | 密着性・一体性が高く、局部放電に強い | 施工が簡便で、補修や加工がしやすい |
適用例 | 高信頼性が要求される設備 | 短工期や特殊施工条件がある現場など |
石油・化学系の工場では、防爆エリアが指定されている場所もあり、防爆工事が必要な場合には、CVケーブルの3芯を採用し、耐圧パッキンと組み合わせて対応することが多くなっています。
6600V(6.6kV)用のCVケーブルでは、各相ごとに遮蔽銅テープ(金属シース)が巻かれており、これは電界の集中を防ぐとともに、遮蔽層としての役割を果たしています。
この遮蔽銅テープは各相が相互に接続された構造になっているため、仮に一点で遮蔽が破断しても他の相との接続を通じて完全な断線には至りにくい構造です。その結果、遮蔽層破断による火災リスクを低減することができます。
電力用ケーブルは、用途や重要度に応じてさらに特殊仕様を追加する場合があります。

CVTケーブル

単芯のCVケーブルを三本より合わせたものをCVTケーブルと呼びます。名称の「T」は「Triplex(3)」を意味しています。
特徴:
CVケーブルの3芯よりも取り回しが良く、省スペース化に有効です。
防爆工事などの制約がない限りはこの、CVTケーブルが採用されるのが一般的です。
CVケーブルとCVTケーブルの違い
ケーブル1本当たりでの構成や材質はどちらも同じものとなっています。
ただし、3kV用ケーブルでは遮蔽銅テープの巻き付け位置に違いがあります。
制御用
CVV・CVVSケーブル

CVVケーブルとは、「ビニル絶縁ビニルシース制御ケーブル(Control cable Vinyl-Vinyl)」の略称で、主に制御回路や計装回路に使用される低圧ケーブルです。定格電圧は一般に600V以下で、機器制御や信号伝送に適した構造を持ちます。
構造:
- 導体:軟銅より線(単線または集合より線)
- 絶縁体:塩化ビニル(PVC)
- シース(外装):塩化ビニル(PVC)
- 必要に応じて遮蔽付きタイプ(CVVS, CVV-Sなど)も存在する
特徴:
- 柔軟性が高く施工が容易
機器配線や制御盤内部、配線ダクト内での取り回しに適しています。 - 難燃性・耐油性を備える
塩化ビニルを使用しているため、工場やビル設備での使用に適します。 - 多芯対応(2心~50心程度)
複数信号や多回路の制御に1本で対応可能。省配線・省スペース。 - 遮蔽タイプも選択可能
ノイズ対策が必要な場合は、銅テープや編組遮蔽付きのCVVS(またはCVV-S)を選定します。
主な用途:
- 制御盤や動力盤と現場スイッチ間との信号伝送用配線
- 工場のFA設備、空調、昇降機の制御用配線
- 建物のBAS(ビルオートメーション)回路 など
類似ケーブルとの比較:
種類 | 絶縁体 | シース | 用途 | 遮蔽の有無 |
---|---|---|---|---|
CVV | ビニル | ビニル | 制御・信号 | 基本なし(オプションで有) |
CVVS / CVV-S | ビニル | ビニル | 制御・信号 | 遮蔽あり(ノイズ対策) |
VVR | ビニル | ビニル | 電源供給用 | 太径・単芯が多い |
CVVケーブルはJIS C 3406に準拠しており、一般制御回路における標準的なケーブルとして長年使用されています。コストパフォーマンスにも優れ、多芯配線を必要とする現場で重宝されています。
移動用(クレーン等)
キャブタイヤケーブル

キャブタイヤケーブルは、耐久性や柔軟性に優れた電線で、主に屋外や工場などで使用されます。2種および3種キャブタイヤケーブルは、それぞれ異なる特性を持ち、使用環境に応じた選定が必要です。
2種キャブタイヤケーブル 2種キャブタイヤケーブル(2PNCT)は、ゴムや合成樹脂を使用した絶縁層と外装を持ち、耐油性や耐候性に優れています。主に移動電源供給や機械設備の電源ケーブルとして使用され、柔軟性が求められる場面に適しています。
3種キャブタイヤケーブル 3種キャブタイヤケーブル(3PNCT)は、より高い耐久性や耐摩耗性を備えており、過酷な環境下での使用に適しています。特に、重機や建設現場、船舶などでの電源供給に利用されることが多く、外装が強化されているのが特徴です。
構造:
- 導体:軟銅より線
- 絶縁体:クロロスルホン化ポリエチレン(CSPE、商品名例:Hypalon®)
- シース:同じくCSPE(難燃・耐候・耐油)
- 構造:多芯または単芯、極めて柔軟性が高い
特徴:
- 高い耐候性・耐熱性・耐油性 CSPE材により、屋外使用や油のかかる環境でも長期間使用可能。
- 柔軟で繰り返しの屈曲に強い 移動機器やクレーン、工作機械などの可動部に最適。
- 難燃性があり火災安全性に優れる 火災時の延焼リスクを低減。安全性が高い。
主な用途:
- クレーン、ホイスト、工作機械などの移動電源ケーブル
- 工場内の配線(特に油や熱がある場所)
- 屋外設備や仮設配線
- トンネル、鉱山、建設現場の仮設電源
2種、3種キャブタイヤケーブルの違い
種類 | 絶縁・シース材 | 柔軟性 | 耐候・耐油性 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
2種(2CT) | CSPE(ハイパロン) | ○ | ◎ | 屋外・油・熱がある環境 |
3種(3CT) | 合成ゴム(CR/EPR) | ◎(最柔軟) | ◎ | 可動機器・巻取り装置など |
構造の違い
- 2種キャブタイヤケーブル:柔軟性を重視し、絶縁体や外装にゴムや合成樹脂を使用。軽量で扱いやすいため、可動部分や移動電源供給に適しています。
- 3種キャブタイヤケーブル:より強度が高く、外装の耐久性が向上。耐摩耗性や耐衝撃性を強化しており、過酷な環境での使用に向いています。
耐久性・使用環境
- 2種:耐油性や耐候性に優れ、比較的穏やかな環境での使用が一般的。工場内や屋外の一般的な設備で利用されます。
- 3種:高い耐熱性・耐摩耗性を持ち、振動が多い場所や重機周辺、建設現場などの厳しい条件下で使用されることが多いです。
用途の違い
- 2種:設備機器の配線や電動工具、屋内・屋外の移動電源供給などに適しています。
- 3種:鉱山、建設現場、造船所などの厳しい環境や、大電力を要する機械の電源供給に使われることが一般的です。
防災用
耐火ケーブル

耐火ケーブルは、火災時や高温でも機能を維持する電線です。普通の電線は火災で燃えたり、機能を失ったりしますが、耐火ケーブルは火災の中でも電力供給や信号伝達を一定時間守ることができます。
特徴
- 耐熱性 高温でも断線や漏電しにくい。
- 火災時に機能維持 最低でも1時間以上、火災中でも電気が通るよう設計されている。
- 特殊な構造 耐火ゴムやシリコンなど、特殊な素材で絶縁され、火災の熱から守られる。
主な用途
- 病院やデータセンターなど、火災時に電力供給や通信が必要な場所
選び方のポイント
- 使用場所に合った耐熱温度を選ぶ。
- 規格(例えばIEC 60331)に準拠した信頼性のある製品を選ぶ。
耐熱電線
耐熱電線は、高温環境下でも電気の通電機能を保つことができる電線です。通常の電線は高温になると絶縁体が溶けたり、導体が劣化したりして電気が通らなくなることがありますが、耐熱電線はそのような高温環境でも安全に使用できるように設計されています。主に、2種ビニル絶縁電線が使用されます。
特徴
- 高温耐性 耐熱電線は、通常の電線に比べて高温に強い素材が使われており、200℃以上の温度にも対応できるものもあります。
- 特殊な絶縁体 通常のプラスチックやゴムではなく、耐熱性の高い素材(シリコンゴムやPTFEなど)が絶縁体として使用されます。
- 耐久性 高温でも絶縁性能が維持され、電気的な性能が低下しにくい。
主な用途
- 産業機器 高温が発生する機械や設備(例えば、炉やモーター)
- 自動車や航空機 エンジンルーム内や高温の機器周辺
- 電気ヒーターや家電製品 高温を扱う機器での配線
選び方のポイント
- 使用環境の温度に適した耐熱電線を選ぶ。
- 絶縁体の素材(シリコン、PTFEなど)が環境に合っているかを確認する。
耐熱電線は、高温でも安定した性能を発揮するため、特に温度の高い場所で使用される機器に欠かせない部品です。
屋内配線用
VV・VVFケーブル
VVケーブルとVVFケーブルは、いずれも低圧屋内配線に広く使用される電力ケーブルですが、形状や用途において異なります。以下に、それぞれの特徴と用途を簡潔に解説します。
VVケーブル(VVR)
- 正式名称:600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル丸形
- 構造:銅導体を塩化ビニル(PVC)で絶縁し、さらにPVCで外被を施した丸型ケーブル
- 用途:住宅や工場などの屋内配線、特に引込線や電力供給用
- 特徴:耐水性や耐老化性に優れていますが、高温には弱い
VVFケーブル(Fケーブル)
- 正式名称:600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形
- 構造:VVケーブルと同様の構造ですが、平型に成形されています
- 用途:一般住宅や商業施設の屋内配線、照明やコンセント回路への電源供給
- 特徴:平型で取り回しが容易で、施工性に優れています
VVケーブルとVVFケーブルの違い
項目 | VVケーブル(VVR) | VVFケーブル(Fケーブル) |
---|---|---|
形状 | 丸型 | 平型 |
用途 | 引込線、電力供給用 | 屋内配線、照明・コンセント回路 |
施工性 | 固定配線向き | 柔軟で取り回しが容易 |
特徴 | 耐水性・耐老化性に優れる | 施工性に優れ、一般住宅で広く使用される |
接地線用
ビニル絶縁電線(IV線)
ビニル絶縁電線は、導体(銅やアルミニウム)にビニル(PVC)で絶縁を施した電線です。主に、接地線用といて使用されます。
接地線の選定方法は内線規程(JIS C 3502)に記載があるので、そちらを参考に選定するようにして下さい。
一般的には以下の算定式が用いられます。
\( \rm A = 0.052 \times I_{n} \)
この式では、\( \rm I_{n} \)(定格電流) に 0.052 を掛けることで、適切な接地線の断面積を求めることができます。
計算手順
- 過電流遮断器の定格電流 \( \left( \rm I_{n} \right) \) を確認
例:100Aのブレーカーがある場合、\( \rm I_{n} = 100 [A] \) - 算定式に代入
\( \rm A = 0.052 × 100 = 5.2 [sq]\) - 直近上位のケーブルサイズを選定
5.2sqに最も近い標準サイズは 8sq となります。
盤内配線用
600V電気機器用ビニル絶縁電線(KIV線)
600Vまでの電圧で使用するために設計されたビニル絶縁電線で、主に電気機器や配電盤、機器の接続配線などに使用されます。
特徴
- 絶縁体 ポリ塩化ビニル(PVC)を使用し、耐熱性や耐水性に優れています。
- 柔軟性 銅導体を使用し、取り回しが簡単です。
- 耐久性 長期間使用できる耐摩耗性があります。
6,600V高圧機器内配線用EPゴム絶縁電線(KIP線)
6,600Vまでの高圧機器内で使用するために設計された、EPゴム(エチレンプロピレンゴム)絶縁の電線です。主に高圧設備の内部配線に使用されます。
特徴
- 絶縁体 EPゴムを使用し、耐熱性・耐寒性・耐油性に優れ、厳しい環境条件下でも安定して機能します。
- 耐高圧 最大6,600Vまで対応でき、高圧機器の内部配線に適しています。
- 柔軟性 ゴム絶縁体により、柔軟で取り回しがしやすいです。
- 耐久性 優れた耐久性と長寿命を提供します。
主な用途
- 高圧機器の内部配線 変圧器や配電盤など、高圧設備の接続に使用されます。
耐熱・耐候性ビニル絶縁電線(WL1)
耐熱性・耐候性に優れたビニル絶縁電線で、主に屋外や高温環境下での使用を想定しています。一般的に、建物外の電力供給や設備配線、機器の接続に用いられます。
特徴
- 耐熱性・耐候性 高温や紫外線に強く、屋外環境や高温環境での使用に適しています。
- ビニル絶縁 ビニル絶縁体を使用し、優れた電気的絶縁性を提供します。
- 耐摩耗性 外部からの衝撃や摩擦に強く、長期間の使用にも耐えます。
- 柔軟性 軟質なビニル絶縁により、配線作業がしやすいです。
主な用途
- 屋外配線 建物外部や屋外設備の電力供給に使用されます。
- 高温環境での配線
工場や高温の機器接続で使用されることが多いです。盤内のブスバーとの接続にも使用します。
ケーブルサイズ
ケーブルサイズを選定するには、許容電流と電圧降下を確認する必要があります。
許容電流
一般に、ケーブルのサイズが大きくなるほど、流せる電流(許容電流)も大きくなります。
ケーブルの許容電流とは、通電によって電線が発熱しても、その温度上昇が一定の範囲内に収まるように定められた電流値です。これにより、電線の性能を損なうことなく、所定の寿命まで安全に使用することができます。
許容電流は、配列、条数、布設方法、周囲温度、被覆・絶縁材料などの使用条件によって大きく異なります。計算はJCS 0168(日本電線工業会規格)に基づいて行われますが、条件ごとの計算には時間がかかるため、一般にはケーブルメーカーが示す標準条件下での許容電流一覧表が用いられます。
600V CVTケーブルの許容電流の例
公称断面積 [mm²] | 単芯 [A] | 2芯 [A] | 3芯 [A] |
---|---|---|---|
2 | 31 | 28 | 23 |
3.5 | 44 | 39 | 33 |
5.5 | 58 | 52 | 44 |
8 | 72 | 65 | 54 |
14 | 100 | 91 | 76 |
22 | 130 | 120 | 100 |
38 | 190 | 170 | 140 |
60 | 255 | 225 | 190 |
100 | 355 | 310 | 260 |
150 | 455 | 400 | 340 |
200 | 545 | 485 | 410 |
250 | 620 | 560 | 470 |
325 | 725 | 660 | 555 |
実際の設計では、この一覧表の値に余裕率(逓減率)を掛けて許容電流を見積もり、必要な電流を安全に供給できるケーブルサイズを選定します。
暗渠…ケーブルダクト、ラック、ピットの場合にはこの値を参考にします。
管路…電線間で敷設する場合にはこの値を参考にします。
気中…架空で敷設する場合にはこの値を参考にします。
逓減率はケーブルの配列方法から、以下の表を参考に決定します。

0.7~0.5程度の値を採用することがほとんどです。
実際にどんな条件から計算しているかを詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
電圧降下
導体の抵抗、インダクタンス成分による電圧降下によって、負荷側の端子まで電圧降下を以下の式より計算し、電圧が使用範囲内に収まっていることを確認します。
\( V_d = K \times I \times \left( R \cos\theta + X \sin\theta \right) \times L \)
\(V_d\):電圧降下 \( [\rm V] \)
\(K\):配線方式による係数(単相2線式は\(2\)、三相3線式は\(\sqrt{3}\)など)
\(I\):電流値 \( \rm [A] \)
\(R\):導体の抵抗 \( [ \Omega / \rm {km} ]\)
\(X\):導体のリアクタンス \( [ \Omega / \rm {km} ]\)
\(\theta\):負荷の力率角
\(L\):電線の長さ \( \rm [km] \)
使用条件によりますが、電圧降下の値は定格電圧に対して10%以内と定める場合が多いです。
参考サイト
フジクラダイヤケーブル株式会社(Fujikura Dia Cable, Ltd.)
ケーブルカタログ
https://www.fujikura-dia.co.jp/catalog-book/index.html
住友電気工業株式会社(住友電工、Sumitomo Electric Industries, Ltd.)
ケーブルカタログ
SWCC株式会社(旧 昭和電線ホールディングス株式会社)
ケーブルカタログ:
https://www.swcc.co.jp/sfcc/products/pdf/SFCC_Catlog_S_web.pdf#page=12